詳細は省くが斑目貘は見事自身の心臓を奪還することに成功した。話せば長くなるので端的に言うと、宿敵であったゴーネン及び彼の息がかかった組織は軒並み斑目貘の手中に納まり、なんやかんやあって斑目貘の心臓は大きな不具合もなく本来の持ち主のため鼓動することを選んだのだ。
斑目貘はこれまで重い病を患った心臓を抱えてありとあらゆる運動を制限されていた。外見の年齢からは想像が付かないほど老人然とした運動能力だった斑目貘は、しかし元々は健常な心臓の持ち主であり――いやこの話はまたの機会に。とにかく、病弱で頼りない斑目貘というのはあくまで仮の心臓が生み出した虚像であり、本来の彼の姿は生命力に満ち溢れた美丈夫だったのである。
ところで閑話休題、斑目貘は脆弱な心臓の時期にすったもんだあって相棒の梶隆臣と恋人関係になった。紆余曲折を経て二人はセックスする仲にまで関係を深めたわけだが、なにかと色々あって彼らの性生活は今まで決して充足しているとは言えなかった。他人様の夜への言及は野暮なのでサラリと流すが、片方は体が満たされず、また片方は脳が満たされていなかったのだ。筆舌に尽くしがたい苦労を重ね、涙なしには語れない覚悟をもってトライ&エラーを繰り返していた彼らは、しかしまぁ、ここにきて諸々の問題が立ち消えていた。ああだこうだ言っていてもここまでの文章のように悪戯に行数を消費してしまうだけなので、そろそろ思い切って簡潔に帰結することとする。
つまりはかくかくしかじか、斑目貘と梶隆臣のセックスに最早なんの障害も無いのである。
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